【2010年1月】共有者が死亡した場合の共有持分の扱い

建物がAとBの共有となっていましたが、Aが死亡しました。Aには相続人がいません。Aの共有持分は、当然にBに移転するのでしょうか。

1.Aの共有持分が、当然にBに移転するものではありません。Aについて、特別縁故者に対する財産分与(民法958条の3。以下、条文を掲げるときは、民法)がなされないときに、Aの共有持分がBに帰属することになります。

2.さて民法は、「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する」と定めています(255条)。この条文だけをみると、共有者の一人が死亡して相続人がいないときは、当然にほかの共有者に権利が移転するようにも読めます。

 しかし同じく民法には、相続人としての権利を主張する者がない場合において、「相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる」という定めもあります(特別縁故者に対する財産分与。958条の3第1項)。

 そこで、共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したとき、その持分が、直ちに255条により他の共有者に帰属するのか(255条優先説)、それとも958条の3に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、財産分与がなされないときに、255条により他の共有者に帰属するのか(958条の3優先説)のかという問題が生じます。

3.この問題について、最高裁は、次のとおり判示して、958条の3優先説に立つことを明らかにしています(最高裁平成元年11月24日判決)

『958条の3の規定は、本来国庫に帰属すべき相続財産の全部又は一部を被相続人と特別の縁故があった者に分与する途を開き、右特別縁故者を保護するとともに、特別縁故者の存否にかかわらず相続財産を国庫に帰属させることの不条理を避けようとするものであり、そこには、被相続人の合理的意思を推測探究し、いわば遺贈ないし死因贈与制度を補充する趣旨も含まれているものと解される。』

『被相続人の療養看護に努めた内縁の妻や事実上の養子など被相続人と特別の縁故があった者が、たまたま遺言等がされていなかったため相続財産から何らの分与をも受けえない場合にそなえて、家庭裁判所の審判による特別縁故者への財産分与の制度が設けられているにもかかわらず、相続財産が共有持分であるというだけでその分与を受けることができないというのも、いかにも不合理である。これに対し、右のような場合には、共有持分も特別縁故者への財産分与の対象となり、右分与がされなかった場合にはじめて他の共有者に帰属すると解する場合には、特別縁故者を保護することが可能となり、被相続人の意思にも合致すると思われる場合があるとともに、家庭裁判所における相当性の判断を通して特別縁故者と他の共有者のいずれに共有持分を与えるのが妥当であるかを考慮することが可能となり、具体的妥当性を図ることができるのである。

 したがって、共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは、その共有持分は、他の相続財産とともに、958条の3の規定に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、この財産分与がされず、共有持分が承継すべき者のないまま相続財産として残存することが確定したときにはじめて、255条により他の共有者に帰属することになると解すべきである。』

4.なお、マンションの敷地利用権に関し、専有部分と敷地利用権の分離処分が禁止されている場合には、民法255条の規定は適用されません(区分所有法24条)。区分所有者が死亡して相続人がいない場合には、土地の共有持分は、ほかの区分所有者に移転するのではなく、専有部分とともに、国庫に帰属することになります(959条前段)。

5.ところで、社会が宅建業者に求めるものは、広く、かつ、深くなっています。消費者保護、インターネットへの対応、若者層のニーズの把握など、多くの課題がありますが、今や我が国は、高齢化社会を迎えており、高齢者の問題も、避けることはできません。そして、法的な観点からみても、高齢者に関しては、独特の問題が存在します。

 今回のご相談内容も、高齢化社会において、ますます重要性が高まっている問題といえましょう。高齢者に関する法律問題も、宅建業者が社会から求められる役割を果たすために学ぶべき事項のひとつです。


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