【2003年8月】知人は長年、現在の住所地で生活していましたが

知人は長年、現在の住所地で生活していましたが、年老いたために息子夫婦との同居を決意し、土地を売った代金で当面の生活費にしようと考えていました。ところが、土地を売却しようと調べてみると、自分の敷地の一部に他人名義の土地があることが分かりました。登記簿を調べると表示登記しかなく、しかも、所有者の名前は表示されていても、その住所の記載がありません。知人がこの土地を処分したいとき、どうすればいいのでしょうか。

【Q】
 知人は長年、現在の住所地で生活していましたが、年老いたために息子夫婦との同居を決意し、土地を売った代金で当面の生活費にしようと考えていました。ところが、土地を売却しようと調べてみると、自分の敷地の一部に他人名義の土地があることが分かりました。登記簿を調べると表示登記しかなく、しかも、所有者の名前は表示されていても、その住所の記載がありません。知人がこの土地を処分したいとき、どうすればいいのでしょうか。

【A】
 長年、自分の土地として使用していたとすれば、その土地の所有権の時効取得の可能性がでてきます。
 本件で20年以上の占有の継続があるのであれば、占有開始のときにさかのぼっての時効取得が可能でしょう。
 しかし、問題は相手はだれかです。登記簿謄本では名前しかありませんので、とりあえず、その土地を本籍地とする、その人の戸籍か、あるいは住民票があるかを調べてみてください。
 もし、戸籍等が不明であるときは、その名義人を被告とし、住所不明としての公示送達による時効取得を理由とする所有権移転登記請求の裁判を申し立ててください。判決によって、その土地の名義人を知人名義にして売却することになると思います。

【Q】
 では、その名義人は戸籍上、生存していることが判明していても、その所在が不明のときはどうでしょうか。

【A】
 前のケースでは、名義人はもしかしたら死亡していたかも知れませんが、それを戸籍上明らかにはできませんので、生存しているとして公示送達による判決を求めました。
 今回のケースは、その所在が不明なケースですので、公示送達による判決を求める典型例といえます。

【Q】
 名義人の死亡は戸籍上はっきりとしていますが、その相続人が、全員、相続放棄をしていたときはどうしたらよいでしょうか。

【A】
 相続人がいないときは、土地は最終的には国庫に帰属してしまいます(民法959条)。
 しかし、その前に相続人の存在が明らかでないときには、相続財産法人がつくられます(同951条)、そして、その財産の処分を決めるため、家庭裁判所は関係者などの請求で相続財産管理人を選任して、相続人の捜索などをします。
 しかし、これでは本件のように土地を処分したいようなときには時間がかかってしまいます。
 しかも、相続財産管理人は本件土地以外の財産も管理するため、その選任にあたっては多額の予納金を裁判所に納めなければいけません。そこで、この土地の問題のためだけに特別代理人を選任し、その特別代理人に対して、本件土地は時効取得が完成したとの裁判を申し立てることができれば、費用も時間もかからず好都合です。
 そして、この特別代理人を選任するよう、その知人からの申立てを家庭裁判所が認めて、裁判をさせた事例もいくつか報告されています。
 しかし、法務局によっては、土地名義人から知人に名義を移すにも、登記上の義務者がいない以上、特別代理人の選任では登記手続を認めないとしているところもあります。
 この場合には、面倒でも相続財産管理人を、多額の予納金を納めて選任し、甲区欄のところに登記名義人表示変更の登記をつけ、その中に「相続人不存在」「亡○○相続財産」という記載をさせたのちに、判決による移転登記をすることになります(裁判の被告は相続財産管理人)。たいへん時間と費用がかかることですが、このような運用が実際のところのようです。