【2003年7月】隣地の所有者が下水管を設置するにあたり

隣地の所有者が下水管を設置するにあたり、自分の土地を通らせてくれと申し入れられたが、その申入れに応じなければいけないかと質問されました。裁判所の考え方はどうなっているのでしょうか。

【Q】
 隣地の所有者が下水管を設置するにあたり、自分の土地を通らせてくれと申し入れられたが、その申入れに応じなければいけないかと質問されました。
 裁判所の考え方はどうなっているのでしょうか。

【A】
 下水道については、以下のような下水道法11条1項の規定があります。
 「前条第1項の規定により排水設備を設置しなければならない者は、他人の土地又は排水設備を使用しなければ下水を公共下水道に流入させることが困難であるときは、他人の土地に排水設備を設置し、又は他人の設置した排水設備を使用することができる。この場合においては、他人の土地又は排水設備にとって最も損害の少ない場所又は箇所及び方法を選ばなければならない。」
 つまり、下水については上記のような規定があることから、下水管の設備を隣人が希望しているときには、ケースによっては、これを承認する必要があることになります。

【Q】
 ところで、他人の設置した上水道や下水道(給排水設備と言います)を、自分の土地に利用するために、これに接続するなどして利用できるかの問題がありますが、これについては、どう考えたらよいのでしょうか。

【A】
 この点については最高裁判所平成14年10月15日の判決があります。
 造成宅地は県道と隣接しており、その県道下には水道の配水管と下水の配水管が埋設されていました。
 問題の宅地から県道までは距離があり、県道下の給排水設備を利用するためには、市道下にある給排水設備を利用する必要があります。
 ところが、市道下に給排水設備を埋設した業者は、問題の宅地の所有者が、その給排水設備への接続を希望しても、なぜか、これを拒否しました。
 そこで、その宅地の所有者が市道下の給排水設備の使用を求める裁判を申し立てました。
 これに対して、裁判所は以下のように判決をしました。
 「宅地の所有者は、他の土地を経由しなければ、水道事業者の敷設した配水管から当該宅地に給水を受け、その下水を公流又は下水道等まで排出することができない場合において、他人の設置した給排水設備をその給排水のため使用することが他の方法に比べて合理的であるときは、その使用により当該給排水設備に予定される効用を著しく害するなどの特段の事情のない限り、民法220条及び221条の類推適用により、当該給排水設備を使用することができるものと解するのが相当である。」(判例時報1809号26ページ参照)
 つまり、他人の設置した給排水設備への接続は可能としたわけです。
 以上のように、給排水設備については、下水道法などの規定を参考に、民法の条文などから一定の判断が裁判所で示されています。
 しかし、今日の生活では給排水だけでなく、電気やガスといった問題の解決も隣人相互の間でよくトラブルとなる点です。
 しかし、これらについては、明確な条文もないことから、民法220条といった、いわゆる相隣関係の民法の条文を参考としながら、個々のケースで判断していくしかないようです。
 一般の土地売買では、あまり問題にならないことかも知れませんが、古くからある家を取り壊して新築建物を建てるようなケースでは、このようなトラブルも生じることもありますので、今回紹介した判例をよく理解しておいてください。